ブラッディマリー
腹が減った、という和に連れられて、この近くのコンビニまでよく歩いた。家からあまり出ることのなかった万里亜にとってコンビニは珍しいもので、楽しかった。夏が近いというのに、売り場にむき出しで並べられているおでんの鍋も珍しかった。
万里亜は一度、店員がバックヤードから大きな袋を抱えてきたところに出くわしたことがある。
レジの奥の目立たない場所にあるフライヤーに、店員が今持ってきた袋のその中身をごろごろ転がす。
数分もするとから揚げが出来上がってきたことに興奮する万里亜を、和は『恥ずかしいからやめろ』とたしなめた。
あれは、つい最近のことなのに……。
あのまま、澄人から連絡が入らないことを万里亜は心のどこかで願っていた。
澄人が和を訪ねてきた、それが合図だった。もともと不安定な精神状態、澄人のことを忘れていたこともあるくらいで。
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