ブラッディマリー
 

 血まみれになっている和を見た時、万里亜は二つの恐怖を感じていたのだ。


 和が死んでしまうかも知れない恐怖、澄人の元へ戻らなければならない恐怖。



 だったら、今死にたいと思った。



 ヴァンパイアとして覚醒した和に、身体中の血を啜られても構わない、と。


 けれど結局、万里亜は行動を起こしたのだ。澄人に言われるままに。


 ナイフくらいで、和が死ぬわけがないことは判っていた。けれど、苦痛に顔を歪める和を見ると、ギシギシと心のどこかが軋んだ。



 でも、和を刺してしまった事実は消えない。たくさんの人間を、澄人とともに殺めてきたことなど、もっと消せない。



 迷い始めると、澄人兄さんはいつだって優しく抱きしめてきた。


 そうしてあたしの血を啜り、また自分の血をあたしに与えることを繰り返しながら、何も判らなくなるまでベッドに沈められた。


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