ブラッディマリー
 

 覚えていないところで犯した罪は、どのくらいあるのだろう。想像したところでちっともぞっとしない自分に、万里亜は嫌気がさした。覚えている屍の数だけで、既に諦めの境地だ。


 それでも意地汚く、まだこの地獄から助かりたいと思っている。


 しかも、男に助けてもらいたい、などと都合のいいことを期待しながら。


 あんな裏切りを突き付けておいて、許してもらえる筈がないことなど判っているのに、まだ。



 和が自分を許すわけがない。


 父親の不貞を許せず、復讐をしてしまったと和は言っていたけれど、万里亜からすれば、とても純粋な動機だった。


 気付いていたという彼の母親も、多分そう感じていたに違いない。



 どうして。


 どうして兄さんは、今頃黒澤を潰そうなんて思ったの。



 どうしてあたしを、和と会わせたの──。


.
< 320 / 381 >

この作品をシェア

pagetop