ブラッディマリー
覚えていないところで犯した罪は、どのくらいあるのだろう。想像したところでちっともぞっとしない自分に、万里亜は嫌気がさした。覚えている屍の数だけで、既に諦めの境地だ。
それでも意地汚く、まだこの地獄から助かりたいと思っている。
しかも、男に助けてもらいたい、などと都合のいいことを期待しながら。
あんな裏切りを突き付けておいて、許してもらえる筈がないことなど判っているのに、まだ。
和が自分を許すわけがない。
父親の不貞を許せず、復讐をしてしまったと和は言っていたけれど、万里亜からすれば、とても純粋な動機だった。
気付いていたという彼の母親も、多分そう感じていたに違いない。
どうして。
どうして兄さんは、今頃黒澤を潰そうなんて思ったの。
どうしてあたしを、和と会わせたの──。
.