ブラッディマリー
 


 雨が降り注ぐ夜のアスファルトは、無慈悲な程冷たかった。


 芯まで冷え切った身体に優しくないその状況に甘んじながら、万里亜の瞳から涙が流れ落ちる。


 熱い筈のその雫はすぐに雨と混ざり、温度を失って黒い地面へと落ちて行った。



 ──その時。



 万里亜の冷え切った身体を、熱い身体が後ろから包み込んだ。いつ夜が明けるとも知れない、深く暗い道端で。



 何故そこで出会えたのかなど、考えるだけ無駄だった。





「……万里亜」





 万里亜の耳元で、和がその名を呼んだ。


.
< 321 / 381 >

この作品をシェア

pagetop