ブラッディマリー
 

 何だっけ。



 万里亜はずっと、実の兄と関係していて?


 数えきれない程人を殺めた過去があって?


 俺を騙すつもりで近付いて?



 で、俺を刺したんだっけ。


 後ろからって、卑怯なことこの上ないよな。



 けど、このベルベットの舌を味わっていると、全部まあいいか、その程度のことじゃないか、と思ってしまう。


 自分の価値観がどこかおかしくなっていることは、和にも判っていた。
 けれど、その狂いっぷりがどうにも気持ちよくて堪らない。例えば脳髄に直接甘いアルコールを射ち込まれたみたいだ、と思った。



 が、万里亜のワンピースの肩を左右に開いた瞬間、欲情に紛れて怒りが込み上げる。


 薄々判ってはいたが、こうも見事に澄人の痕を見せつけられてしまうと、甘やかしてやろう、などという考えは吹き飛んでしまった。


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