ブラッディマリー
先にバスルームに入った和について行った万里亜の鎖骨の下、胸元近くを何かが素早く掠める。
え? と万里亜が驚くのと同時に、そこに身体中の血管が集まってきたかのようにどくどくと脈打ち始めた。
シャッ、とシャワーヘッドから勢いよく水が出る音がした。
和は顔色ひとつ変えずに万里亜を見下ろす。その手に、剃刀が握られていた。
「……その身体ん中に、どれだけ白城澄人の血が入ったんだよ」
やがて熱さと痛みがそこに集中し始めて、万里亜は思わず顔を歪める。
見なくても、触れなくても判る。和に切られた胸元は、今真っ赤な血に染まっているということが。
流れ続ける水から、やがて湯気が立ち昇り始める。
和はシャワーを手に取ると、噴出口をそのまま万里亜に向けた。
「きゃ……っ!」
「言えよ、万里亜。言ったらその汚れまくった身体、洗ってやるから」
「和……」
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