ブラッディマリー
「……和、誰か女の人抱いたの……?」
今までその瞳に棲んでいた獣はどこへやら、和のよく知る万里亜がようやく現れた。
けれど、和は正直どちらの彼女でも構わなかった。その身体の中に在る心がどんな色をしていようが、万里亜は万里亜だ。
激しい二面性を持つ万里亜を、逆に面白く感じている自分がいるのだから。
万里亜の──女の身体さえあればいいというわけではない。万里亜のこの身体は、世界のどこを探してもここにあるひとつだけだ。ということは、万里亜の心もまた、この身体の中にしかいないのだ。
深く傷付いた心と身体を持ち寄り、痛々しくぶつけ合うこの行為をある意味娯楽のように感じているこの自分は、ヴァンパイアとしての自分なのだろうか。
そんな戸惑いすら、今は馬鹿馬鹿しい。
既に湧き上がった感情にどんな理由や名前をつけてみたところで、それは全て後付けのもの。
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