ブラッディマリー
 

 自分が感じ、自分の目で視てしまった以上、どうあがいてもすり替えはきかないし、なかったことになどならないのだ。



「……お前のせいで、動けなかったからな。どうしても血が必要だった」


「あの、義理のお母さん……?」


「病人の血なんて吸えたもんじゃない。もっと若くて、健康な女」


「……」



 万里亜は熱いシャワーに打たれながら、ようやく胸元の傷を押さえる。その目が、せわしなく左右に揺れた。万里亜は今にも泣きそうだった。



「血を貰うだけのつもりが、身体まで預けて来た。だから、ありがたく頂戴した。ヴァンパイアにはよくあること、だろ」


「そう、だけど、でも」



 大丈夫、別に悦かったわけじゃないから。



 心の中だけでそう言って、和はわざと顔を歪めて笑った。

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