ブラッディマリー
肋骨から胸を這っていく指にぴくり、と反応を見せながら声を漏らす万里亜の顔がよく見えるようになって、和ははっと驚く。万里亜のきれいな紅い瞳から、涙がとめどなく零れていた。
万里亜の長い髪がそれを全部受け止めていたのか、涙が和の胸を濡らすことはなかった。
目が合うと、万里亜は悔しそうに顔を歪める。泣いていたことを悟られたくなかったようだった。
「……泣くなよ」
「だって……もうあたし、どうしたらいいか、本当に……」
正直、想像がつかなかった。
万里亜が見聞きしてきたこと、経験してきたこと。そのどれもが想像するしかないことばかりだ。
同じヴァンパイアでも、人間として生きて来た自分は人の血を啜ることはなかったし、女と寝ることも自分の意思でそうしてきたことで。もちろん、誰かを殺したことなどない。
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