ブラッディマリー
 


 たった今人を殺して来た万里亜を恐ろしいとは思わなかったけれど、彼女自身その悔いをどう受け止めているか──そんなことは、自分には判らない。



 和が心配しているのは法に裁かれるとか、そういうことではない。


 想像することしか出来ない万里亜の心。


 泣いて済むようなことではないのは、万里亜自身が一番よく判っているのだろう。



 慰めてやればいいというものではない。ましてや、形だけの責めなど何の意味もない。


 こうして身体を繋いで、何も考えられないようにし続けてやることが出来たなら、それが一番いいのだけれど。



 けれどそれは救いとは程遠い、ある意味での罰であり、逃避という名の罪でもあり、また同じ地獄であるような気がした。



 ……そうか。


 俺は最初から、この娘を救いたいって、そう思ってたんだな……。



 今のこの状況を予感していたわけではなかった。

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