ブラッディマリー
伏し目がちのその顔を、和は素直に綺麗だと思った。が、それだけで情を移せる程、初心でもお人よしでもない。
「殺して……なんて無理だよね、判ってる」
「当たり前だ。昨日知り合った女の為に人生狂わせる程イカれてねえよ」
パシャ、パシャ……とゆっくりめの自分達の足音がやけに耳についた。
「1日に、1回くらい必要なの」
「……血が? セックスが?」
「うん……どっちかでいいんだけど」
和は少し皮肉のつもりで言ったのだが、万里亜は真面目に答えていた。こっそり肩を竦めて、和は万里亜の次の言葉を待つ。
「……身体が人間と違うって言ったって、頭の中は普通と変わらないわ」
「ふうん?」
「本能だからって、恋も愛もなしに男の人となんて──」
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