ブラッディマリー
 

 伏し目がちのその顔を、和は素直に綺麗だと思った。が、それだけで情を移せる程、初心でもお人よしでもない。



「殺して……なんて無理だよね、判ってる」


「当たり前だ。昨日知り合った女の為に人生狂わせる程イカれてねえよ」



 パシャ、パシャ……とゆっくりめの自分達の足音がやけに耳についた。



「1日に、1回くらい必要なの」


「……血が? セックスが?」


「うん……どっちかでいいんだけど」



 和は少し皮肉のつもりで言ったのだが、万里亜は真面目に答えていた。こっそり肩を竦めて、和は万里亜の次の言葉を待つ。



「……身体が人間と違うって言ったって、頭の中は普通と変わらないわ」


「ふうん?」



「本能だからって、恋も愛もなしに男の人となんて──」


.
< 34 / 381 >

この作品をシェア

pagetop