ブラッディマリー
雨と血の輪舞
『どこか遠くへ逃げよう』
お母さんの恋人の、そんな言葉に潜む危機に、あたしはどきどきしていた。
車の後部シートにうずくまるようにして座ってたのは、別に寒かったからとかそういうわけじゃなくて、緊張してたから。
お母さんが『大丈夫だから』ってあたしを振り返った瞬間、黒くて大きな車がすぐ前まで迫ってた。
大きな音がして、視界がぐるぐる回って、上も下も判らなくなって、頭の中が真っ白になって。
血の匂いに、意識を呼び戻された。子どもの頭でも、それが判った。
最初に嘗めたのが今にも命尽きようとしていた母親の血だったなんて、そんなこと許されていいの?
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