ブラッディマリー
和は無意識に舌打ちをすると、一瞬迷って、それから万里亜に続くように身を躍らせる。
誰に教わったわけではない。ヴァンパイアの血が流れるこの身で出来ることは、みんな本能が教えてくれる。
「万里亜!」
自分でも驚く程、衝撃もなくすんなりと着地出来た。
和は、澄人の後ろに逃げるように隠れた万里亜の名を呼んだ。瞬間、万里亜の身体がビクリ、と反応する。
責めようとしたわけではなく自分自身への怒りを堪え切れなかっただけだったが、万里亜を怯えさせたなら結局同じことだった。
「……万里亜を返せ。そいつは、あんたとの生活が続くことをこれっぽっちも望んでいない」
和は取り繕うように、鋭い視線を澄人に注いだ。
が、澄人は怯える万里亜をなだめるようにその頭を撫でる。そして、既に紅く光った瞳を和に向ける。
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