ブラッディマリー
 


「これの意思は関係ない。万里亜は、白城のものだ。黒澤にはやれない」


「そんなこと言って、また万里亜を生き地獄に叩き落とすつもりか!」


「地獄……?」



 そう口にして、澄人はクッと苦い笑みを浮かべた。



「では、お前のもとでなら天国だというわけか? ふざけるな。お前のところで暮らしたところで、万里亜自身の生活は変わらない。飼い主が変わるだけの話だ」


「俺は、妹をいたぶり倒して悦んでるようなお前とは違う!」


「では、何故万里亜は今逃げ出して来た? それに気が付いたからではないのか?」



 和は、澄人の影からそっと覗いてくる万里亜を見る。けれど、万里亜は和のその視線から逃れるようにまた、顔を隠してしまう。



「……万里亜」


「ほうら、見ろ。これが答えだ」



 ククク……と、喉を鳴らして澄人が嘲笑った。その状況に、和の心の中に絶望の影が巣食う。

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