ブラッディマリー
 


 嫌に決まってる。



 雨音にかき消えそうな呟きを聞いて、和は複雑な気持ちになり、その場に立ち止まる。


 万里亜も和にならい、足を止めた。



「……身体の痣と、関係あるんだな?」



 こくり、と万里亜は頷く。



「血も、抱かれるのも嫌い。なのに、悦んじゃう自分はもっと嫌い。こんな矛盾は嫌。だから早く死にたいの」


「けど、自分じゃ死ねない?」



「あたしね、ママが好きだった。ママから貰った身体を、自分で壊すことなんて出来なくって……。生きてるって気持ち悪い。どうせみんな、いつかはくたばるのに、何で生まれて、生きてるんだろ」



 ノラネコのような荒んだ目をして、万里亜は吐き捨てた。



 その喉を今ここでかき切ってやったら、いったいどんな色の血が噴き出すのかと、俺はわくわくした。


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