ブラッディマリー
真っ黒のアスファルトに、血が染みて広がっていく。
倒れ込んだ万里亜を見下ろして、和は呆然とその場に立ち尽くした。万里亜の口の端から、血が一筋流れ落ちる。
雨は万里亜に染み込もうと、競ってその身体に降り注いだ。
澄人は手についた万里亜の血を振り払い、まるで空に捧げるかのように掲げる。
和はその仕草をのろのろと追いかけた。
澄人のその瞳が、涙に濡れているような、そんな気がした。
「……腹が立つか? 俺が、憎いか? 殺してみるか……?」
澄人は和の顔を見ずに、どこか楽しそうな様子で空を見上げながら歌うように、とろりと口にする。
和はもう一度、万里亜を見た。すぐに駆け寄ることが出来なかったのは、倒れ込んだ万里亜の様子のせいだった。万里亜はすでに、今のこの状況の何もかもを受け入れてしまっている。
呻き声ひとつ上げず、ぴくりとも動かず、涙に濡れたその紅い瞳はただ命が尽きるのを待っている。それが判ってしまった。
時間をこの手で巻き戻すことが出来たなら、今すぐにそうするのに。
.