ブラッディマリー
 


「まるで、呪いだね。ねえ、和」


「……」



 万里亜は和の母親の死の真相など知らない。


 けれどまるでそれさえどこからか見透かしたかのように、万里亜は笑う。和は、こんな時に笑える万里亜がやはり判らなかった。



「人間と同じかたちをして生まれて来たのに、あたし達は人間とは違うの。人間になりたいなんて思ったことはないけど、でも……この衝動から解放されたらどんなに楽だろうって、いつも思ってた。だから死にたいって、そう望むしかないんだよ……」



 咳き込む万里亜の口から、また血が溢れる。


 万里亜は口の端に残る自分の血を嘗め取り、苦々しい表情を浮かべた。欲望を呼び覚ますことのない、唯一の自分の血。


 澄人は、まるでどうでもいいことのように呟いた。



「……生きていたって、何もいいことなどない。なのにどうして百合亜は、俺とお前を産んだんだろうな……」


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