ブラッディマリー
──母の死後その家は壊され、私財でその土地をすべて買い上げたモノ好きがいた。
おかげで、そこは贅沢な安息の場所となっていた。本当に街外れのその場所は、墓地として存在していても何の違和感もない。
持ち主であるそのモノ好きがデザインに配慮したということもあるのだろうが。
真っ白の煉瓦で組み上げられた高い塀を見上げながら、これは素手ではヴァンパイアしか入れまい、と苦笑し和はスーツのポケットからキーホルダーすら付いていない鍵を取り出した。錠前に鍵を差し込み開ける。
鉄格子を開くと、紅い椿の花が満開の状態で和を待っていた。紺侘助、だったか。
万里亜が遺したテディベアの首を飾っていた緑色のシルクのリボンに、『カミーリア』と刺繍されていた。
椿の花のことだと、尚美が教えてくれた。だからここには椿を植えて貰ったのだ。
万里亜、あるいは百合亜が想いを寄せた花が紺侘助だったかどうかは判らなかったが、和は一番椿らしい花を選んだつもりだった。
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