ブラッディマリー
 


「手ぶらで悪いな」



 和は母親と白城母子のどちらに向かって言うでもなくそう口にすると、小雨になったのを確認して傘を閉じる。



 ぽつぽつと落ちてくる小さな雫が、少し気持ちよかった。和は並んだ墓石を見つめながら、万里亜を抱いた最後の夜を思い出していた。




.
< 366 / 381 >

この作品をシェア

pagetop