ブラッディマリー
 


 ──正直、それだけで吐きそうになった。



 自分の手が、他人の肉や骨、臓物を突き抜けて行く感触が、あまりにおぞまし過ぎて。


 生肉に手を突っ込むのもそう気持ちのいいものではないと思っていたが、これはその比ではなかった。何より、体内というのは人肌よりずっとずっと暖かいものだったから。


 自分を貫いたまま動けなくなっている和の肩に、澄人は力を込めてしがみついた。


 薄いシャツ1枚の和は、澄人の指先の強さに眉をひそめる。ゴホ、と咳き込みながら、澄人は和の耳元でおかしそうに笑った。



「……やはりな。白城は黒澤の血に抗えないのか……」


「……な、に……?」



 澄人は和の肩を借りながら、ふらりと体勢を元に戻した。和の手は澄人の身体の真ん中に刺さったままだ。澄人は、浅い呼吸で見上げてくる万里亜に視線を落とす。

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