ブラッディマリー
 


「……白城の家の者は、もともと黒澤の出だったそうだ……黒澤に何かあった時には、白城が盾になる。大昔、そういう契約がなされていた筈だ」



「……俊さん……≪湊≫はそんなこと、一言も……」


「……奴は昔から日和見で優柔不断な男だったらしいからな。両家に上下関係を作るようなことを、今さら蒸し返したりしないんだろうさ」



 澄人は和から離れるように、ゆっくりと立ち上がった。


 澄人は和の手を掴む。めりめり、と骨の軋む音がして、自分の胸に刺さった手を抜いていった。和の手が抜けると同時に、水たまりにばたばたと血が落ちて行く。


 万里亜の身体から流れるそれとは勢いが違った。



 しかし澄人は満足そうににやり、と口の端を上げて笑う。

.
< 368 / 381 >

この作品をシェア

pagetop