ブラッディマリー
 


「万里亜を迎えに行くふりをしたあの夜、お前を見て本能でやばいと感じた。やはり黒澤の人間と……」


「どういう意味だ?」



「白城が……盾になるというのは、そういう意味だ……白城の血を引くものは、黒澤に惹かれる。……呪いみたいなものだ」



「……」



 澄人はふらつきながら和に背を向け、暗闇に向かって歩き出した。



「だから、黒澤を根絶やしにしてしまいたかった……純血の吸血鬼がちゃんといるくせに、家長の座に平気で人間を据えるような家に、支配されるのは我慢ならない」



 それは、判る気がした。


 敬吾は澄人のそれを支配欲だと言っていたが、白城の者にしか判らないこともきっとあるのだろう。



「……まあ、いい。白城も俺と万里亜を残すのみ、もう終わりだ。殺してやりたい筈の黒澤の者に惹かれて、跪きたくなる俺達のジレンマなど、もう誰にも判らないだろう」


「……お前……」



 すると澄人は立ち止まり、和を振り返って意地の悪い笑みを見せた。

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