ブラッディマリー
 




「──万里亜との恋愛ごっこは、楽しかったか? でも、残念だったな。万里亜にお前への気持ちがあるとしても、それは黒澤と白城の呪いの副産物だ。愛など始めから、ありはしなかった、というわけだ」





 万里亜の瞳が、驚きに見開かれる。



 和が万里亜を見ると、彼女は泣きそうな顔をしてかぶりを振った。その様子を見て、澄人はハハハ……とかすれた笑い声を闇に響かせる。


 和の口の中に、苦い液体が広がる。



「……まだそんな戯言を垂れ流すのか!」


「生憎と、人を不愉快にさせることだけを楽しみに生きて来た。お前のように大事に育てられれば、あるいは何か変わったかも知れないが」



 胸にかぎ状の杭を引っかけ、そのまま裂いたような痛みだけを撒き散らし、澄人はその場に倒れ込んだ。


 澄人の艶のある髪は、途端に真っ白に染まった。それが混血の吸血鬼の末路であることを、和は初めて知ったのだった。

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