ブラッディマリー
 

 けれどその視線は和を通り越して、直接万里亜を見据えている。


 万里亜もそれを感じているのか、決して男の方を見ようとはしなかった。


 和の中で、不確かで数少ない万里亜の情報が瞬時に繋がっていく。



「……こいつに『殺してくれ』なんて言わせてるの、アンタか?」



 そう言われて、男はようやく和を見た。



「何のことだか……」



 眉ひとつ動かさない男の表情に、和は俄かに苛立つ。背に触れる万里亜の指先が、和のシャツを掴んだ。



「和……あたし、嫌」



 万里亜が明らかに和に助けを求めているのを見て、男は小さく喉を鳴らして笑う。



「万里亜、いい加減にしろ」


「嫌がってんだろ」


「……家族の問題です。あなたには関係ない」


「関係あるわよ!」


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