ブラッディマリー
「どうせ君、万里亜が上玉だからってうまく言ったんだろう」
「違うわよ! あたしが……っ」
万里亜は思わず顔を上げた。
瞳から涙がぽろぽろと零れ落ちる。和が振り返ると、万里亜はかたかたと震え出した。
「死にたい、でも助けて欲しいって思いながら歩いてたら──和に会ったの」
万里亜は、和の腰に腕を回す。その仕種が、やっぱり縋るようで。
呼吸の仕方を忘れてしまったかのような苦しさに、和は胸を衝かれた。
「関係ない。お前は私と帰るんだ」
「嫌っ、寄らないで!」
澄人が無理に手を掴むと、万里亜は飛び上がった。そのあまりの怯えように、和は咄嗟に澄人の手を振り払う。
「……俺、黒澤和っていいます」
「クロサワ……?」
澄人の眉間に皺が寄った。
和は、小さく覚悟を決める。
「万里亜は、俺が預かりますよ。アンタのところには──帰さない」
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