ブラッディマリー
重なる気持ち
勢いよく玄関のドアを閉めた。
乱れた呼吸は、和と万里亜のもの。走って帰って来たせいで、二人の足元は散々なことになっている。
『アンタのところには──帰さない』
和は澄人にそう言い放ち、そのまま万里亜の手を引いて走り出したのだ。
澄人はそんな二人を無理に追って来ようとはしなかった。鼠が逃げられないと知りながら弄ぶ猫の余裕のようにも思えたが、あれ以上万里亜を澄人からのプレッシャーの中に置きたくなかった。
後ろ手に鍵を回し、和は自分と同じようにまだ呼吸を整えられずにいる万里亜の顎に手を添える。
ぴくりと万里亜の肌に緊張が走った。
けれどそれが嫌悪でないことは、されるがままに顔を上げた彼女の反応で判ること。
長い睫毛に彩られた大きな瞳が、素直に和を見上げる。怯えた影がまだ残っていた。
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