ブラッディマリー
涙で潤んだ万里亜の顔を見て、和は困ったように笑った。
「泣くなよ」
「何で……? あたし、何も説明してないのに……」
「何で……って」
兄との異常な関係が嫌で逃げ出して来た女が、見ず知らずの出会ったばかりの男を騙す理由など、ないと思うから。
そう口にしようとして、和はそれが自分の願望であることに気付いた。
女は男が思い描く程、美しい生き物ではないことくらい、知っているけれど。
それでも、万里亜は自分にそう思わせて来た女達とは違うと思いたいのか──俺は。
震える万里亜の手を取って、和は欲するままその甲に口づけた。
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