ブラッディマリー
──初めてのそれは、心と身体を引き裂くような快楽をもたらした。
飢えた生き物のように、尚美は和の身体を使って好きなように振る舞う。和は悦楽に表面上の意識を奪われながらも、更にその奥にいる冷静な自分を失うことはなかった。
父親が既にこの女を食い尽くしたのだと思うと、生理的な嫌悪が込み上げる。けれど、父親が知らない間にその妻を寝取っているのだと思えば、込み上げて来るのはさめた笑い。
遊びの延長線上の万引きが癖になっている同級生を冷たく見つめていたが、今は彼らの気持ちが少し判る気がした。
背徳や罪の意識は、人を大人にさせる。
例えばそれがただの錯覚だとしても、へたなドラッグよりは上手く酔いしれることが出来る気がした。
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