ブラッディマリー
尚美と寝てみて、判ったことがあった。
この女は和が思っていたよりずっと貞淑な──いや、そうあろうとする生き物だった。
ことが済んだ後、さざ波が引くように熱が冷めていって、それに伴い尚美は泣き出した。
聞けば、愛人だった頃から、自分の他にも女がいると判っていたとか、今はその女が一番の愛人として扱われているとか。
──それは、自分が育てて可愛がってきた後輩のホステスだとか。
そこまで判っていて親父と一緒になるなんて、と和は眉をひそめた。けれど惚れた弱みなのだから仕方ないのだと、少し落ち着きながら尚美は呟く。
「男が受け止めて、応えてくれたなら──私だって、貞淑を装ってもみせるのに」
ベッドの上でまどろみながら、吐き捨てるようにそう言ったのは──やっぱり15も上の女で。
腹いせに好きな男の息子である和を利用したのだと、尚美はきっぱりと言ってのけた。
傷つけ合う為の行為だった筈なのに、思わぬところで利害が一致してしまい、和はその感情を持て余す。
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