ブラッディマリー
それでも和は、家を出て自分の実家に戻っていた母親・君子のところへ毎日通った。
日に日に顔色の悪くなる君子は、ある日和の背にぽつりと呟いた。
「……毎日来なくていいのに。学校とか、大変でしょう……?」
かすれた老婆のような君子の声は、聞く度和の胸を痛く疼かせる。
「何言ってんだよ」
そう答えることしか出来なかった。
父親・敬吾には新しい女──尚美がいるのだ。だから和は、夫を失い一人になってしまう君子について行きたかった。けれど跡取りだなんだと理由をつけられ、引き止められた。
……跡取りなら、また尚美に産ませればいいものを。
幼い頃から跡取りだと和を連れ回した、その体裁を取り繕う為であることは明らかだった。
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