ブラッディマリー
 

 けれどこの家を出るなら君子への援助を一切しないと言われ、和は黒澤の家に縛り付けられてしまった。


 和が黒澤家に残ることと引き換えに得たものは、君子への充分な援助と、少しの自由。 結局敬吾の思い通りで、和は何ひとつ逆らえない。



 とにかく毎日が不毛だった。


 そんな中、家政婦を通じて敬吾の耳に入るように、この君子の実家を毎日訪ねることは、せめてもの判りやすい反抗なのかも知れない。



 和は、見つめて来る君子と目が合った。



「この頃、急に大人びて来たわね……」



 言われて、どきりとする。


 尚美と共謀して陰で敬吾に復讐を続けていても、苛立ちは晴れない。



 それは君子の前では上手く隠していた──つもりだった。


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