ブラッディマリー
「会う度、何だか違う男の子になっていくみたい……変ね、小さい頃は毎日そうやって、あなたを見ていたのに……」
君子は床の中で仰向けになると、瞼を閉じて自嘲するように笑う。
「……母さん?」
君子はかすれた声を整えることもせず、たどたどしく続けた。
「いつからか、関心ごとはあの人が外に作った女のことばかり。あなたをちゃんと見ることなんてなかった気がする……」
和はきゅ……と口唇を噛み締める。
君子は重々しく瞼を上げ、どろんとした瞳を再び和に向けた。
「こんな母親について行きたい、なんてあなたは言ってくれたのに……ごめんね、和」
「……そんなこと、思ってねえよ。考え過ぎ」
わざと明るく言った和を見て、君子は表情を歪ませる。
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