ブラッディマリー
「……だからなのかしらね」
君子はまた視線を彷徨わせると、あらぬ方向を見上げる。
和はそのか細い声に何故か圧倒されながら、君子の言葉をただ聞いていた。
「こんな母親だから──あなたまで、あの女に奪られてしまったのかも知れないわね」
何故、母がそれに気付いたのだろう。一日のほぼ総てを床の中で過ごし、外のことを知る機会など殆どない筈の君子が。
言ってから、血の気のない頬を歪ませて微笑んだ君子。和は背中のあたりが冷たくなるのを感じていた。
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