ブラッディマリー



 それから何日もしないうちに、和は君子の遺体と対面する羽目になる。



 夫と息子を奪われたという絶望。


 それが君子に、浴室で手首を切らせた。



 彼女の孤独な痛みと叫びは真っ赤な血になって、耐え切れずに身体から飛び出してしまった。



 その姿を見つけた和は半狂乱になり、言葉にならない何かを叫び続けていた。


 やがて聞き付けた誰かが、駆け付けて来るまで。





 母が自殺をした日、正気を失った和の黒髪から色が失われていた。




.
< 64 / 381 >

この作品をシェア

pagetop