ブラッディマリー
 


「へえ、一緒に暮らすの」



 さして驚く様子もなく、俊輔は一瞬にやりと笑ってカウンターから中の和を見た。


 その視線に『ヤッたな』と下世話な意味が含まれていることは無視して、和は涼しい顔でグラスの焼酎を揺らす。


 万里亜はきょとん……と俊輔を見つめた。その視線は世間知らずの若い女特有のもので、俊輔は含み笑いを隠して万里亜に微笑みかける。



「和の連れなら、飲み放題。忙しい時は手伝ってくれるならなお歓迎だ」


「お手伝い……していいんですか?」


「俊さん」



 店員が増えたとばかりに喜ぶ俊輔を咎めるように、和は軽く睨んだ。すると俊輔は手元のカクテルを飲み干し、グラスを和に差し出す。



「判ってるって。カウンターの中の細々したことだけ。接客は頼まない」


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