ブラッディマリー
「物欲しそうな顔すんな。お前はこれ」
「えっ?」
万里亜に差し出されたのは、俊輔と同じ赤い色をしたカクテル。そこにセロリのスティックが刺さっていた。
「でも、今ダメだって」
「これは、バージンマリーってカクテル。お前向け」
聞いていた俊輔が、くっと喉を鳴らして笑う。
「バージンマリーって、お前」
万里亜は瞳をきらきらさせて、グラスを手に取り眺める。
「真っ赤。これも綺麗……」
「血みたい、だろ?」
含みのある和の言葉に少し頬を染めると、万里亜は小さく頷いた。その反応に、俊輔はぴくりと眉を動かす。
「へえ。和の言うことは判るんだな」
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