ブラッディマリー
 


 俊輔が帰った後、支度をして和のデニムを羽織った万里亜を見た。巻かなくても綺麗に纏まる万里亜の髪が、さらりと揺れる。



「……? どうしたの、和」



 少し眠そうな顔をして、万里亜は顔を傾けた。和は煙草に火を点けると、煙越しに万里亜を見つめる。


 煙越しに見るものは少しぼやけて、緩くただ生きるだけの自分にはちょうどよかった。



「……そろそろ、喉が渇くんじゃないのか?」


「あ……」



 万里亜は俯き、困ったように自分の髪を指先で摘む。



 緊張した時や不安を感じた時、人間は何か柔らかいものを触りたがると聞いたことがあるが、万里亜はその典型だと思った。


 和はシルクの黒シャツに合わせた白のネクタイを緩めると、第三ボタンまでを素早く外す。

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