ブラッディマリー
 


「万里亜、ドアの鍵閉めてこっち来い」


「あの、和……」


「いいから、早く」



 万里亜は戸惑いながらドアの鍵を閉めると、開かないように一度確認してからおずおずとカウンターの方に近付いた。


 和はその万里亜の動きに合わせて、カウンターに広げた両手をつくと、首を突き出すようにして示す。


 煙草を指先に挟み、和は万里亜を見下ろした。



「……毎晩毎晩、ヤるのもあれだろ?」


「いいの……?」



 ごくり、と万里亜の喉が鳴る。



 いつもは穏やかにとろんとしたその瞳が、少し尖った。和の腰に、ぞくりとしたものが走る。



 単に、万里亜のこの瞳にやられているだけなのかも知れない。



「……ちょっとだけだから……ありがと……」


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