ブラッディマリー
 

 誘われるように伸びて来た万里亜の細く白い指先に、和は少し緊張する。そのままカウンター越しに背伸びして、万里亜は和のむき出しの首に吸い付いた。


 記憶の通りの僅かな痛みと、心地いい白い闇が薄く頭の中に広がる。これはこれで気持ちがいいかも知れないと思った。マゾの気はこれっぽっちもない筈だけれど。



 自分の脈打つ音と、万里亜が喉を鳴らす音とが、交互に聞こえる。



 三度程それが繰り返されただろうか、万里亜は熱い息を和の首筋に残し、口唇を離した。そして、傷口を癒すように、今噛み付いていたところを万里亜の舌が舐める。



「……っ」



 和はその感触にぞくりとした。


 彼女に与える為でなく、己自身の欲が鎌首をもたげ、和は万里亜からさっと身を引いた。



「あっ、ごめん……ありがとう、和……」


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