ブラッディマリー
「時に、和よぅ」
客が退けた店内、カウンターの中から俊輔は和を見る。
テーブル席の椅子を揃えていた和は振り返った。
「何?」
しっ、と立てた人差し指を口許に当て、俊輔は和を手招きする。その視線の先には、たった今万里亜が入ったトイレ。疑う様子もなく、和はカウンターに近付いた。
「お前、万里亜ちゃん住まわせるようになって2週間くらいか」
「それがどうかした?」
「女の子なんだから、お前がさりげなく気遣ってやれよ?」
「? 何が?」
ちっと小さく舌打ちをすると、俊輔は軽く和を睨み付ける。
「女はあるだろ。月一回」
「……ああ」
言われて和は、少し俯いた。
勿論知らないわけがない。が、ひとりの女と長く付き合った経験のない和にとっては、そういえば……とその程度のことだった。
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