ブラッディマリー
そこまでの関係になっているのに、こんな些細なことで自分を悩ませることの出来る万里亜は大した女だと、和は小さく笑いを噛み殺す。
ふと、和は万里亜を振り返った。
──けれど万里亜は、ある種の男の劣情を同時にくすぐりもする。
心当たりがあるだけに、和は蓋をしている筈の罪悪感に駆られた。
そんな視線に気付いたのか、出る前に和がいっぱいにした灰皿を空にしながら、万里亜は顔を上げる。
「どうしたの? 和」
「……いや」
冷蔵庫の扉を閉め、和は立ち上がった。そのままデニムのポケットから財布を出して、万札を何枚か万里亜に渡す。
「え、何これ?」
驚いた万里亜は一歩退がると、大きな瞳で和を見上げた。
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