ブラッディマリー
 

 けれどそれは見せかけばかりの品を纏った卑しい体裁で、黒澤の跡取りの隣に立つことを望む彼女らは、結局喜んでいた。


 だから自分自身を欲されていたわけではないことを、和はよく判っていた。





 でも万里亜は、そんな女達の誰とも違って、初めて自分を欲してくれているような──そんな気がしてならないのだ。



 背に沿って上がって来た万里亜の指先は、そのまま頭を撫で、自分の胸に和を抱き寄せる。



 今まで、女を鳴かせるだけ鳴かせて果てるのがセックスだと思っていた。


 けれど、少し慣れて来た万里亜とのそれは自分の知っているものとは違う。


 与えていると思っていた自分は何故か癒されて、そして自惚れでなく、万里亜も嫌がってはいないのだと、訊かずとも判る。


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