戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
不思議な感覚に覆われながら、由梨と歩いて行った先こそが2人の配属先であり。
そのプレートに書かれている文字は、そこそこ華やかな部類だと思っていた“人事部”。
いやいや…職種がどうこうの問題じゃないのに、周りの空気に流されそうだ。
「おはよーござい…」
「あー待ってたよ、緒方さん…!」
「あ、部長、おはよ…」
到着したのも束の間、そんな私を捉えた途端に血相を変えて飛んできたのは人事部長。
総務部から異動して2年目の26歳だし、正直言って彼と対峙する事はほとんどない。
「話があるので、今すぐ部長室まで来て欲しいんだが」
「あ、はい…分かりました」
それなのにお呼ばれとは…、周りを大賑わいさせているコトが理由なのは一目瞭然。
ササッと場を離れた部長の背中を見送ると、またしても感じる視線にウンザリだけど。
も、もしかして私…――左遷を通り越して、いきなりのリストラ対象ですか…?
余計に周りの視線を集めたせいか、隣を歩いていた由梨が憐れんだ表情で肩を叩くから。
お呼び出しをくらう羽目となった私は、この状況にいささか困惑するしかないだろう。
ロボット男に頼るのはゴメンだ――そう強く思いつつ、部長室へと急ぎ足で向かった。