戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


懐かしい空間で感慨にふけていると、別の部屋から呼ばれて立ち上がることに。


向かった先でおばあちゃんが、ケーキと緑茶を用意してくれていた。


2人で向かい合って座れば、両手を合わせて“いただきます”と唱えるのは慣例。
それでも絶妙な合唱具合に、思わず目を合わせて笑ってしまった。



「あー…やっぱり、この組み合わせ最高!
おばあちゃんが淹れると、何でお茶もこんな美味しいんかなぁ」


この地方特産の緑茶も季節柄、澄んだ青々しい新茶は味もまろやかでなおさらケーキが美味しく感じる。



和洋折衷な茶器のアンバランスさゆえ一見ミスマッチにみえる組み合わせでも、じつは最強タッグだと主張したいほどだ。



「ふふ、褒めてもおせんべいしかあらへんよ」

「あ、お世辞じゃないからね」

むかしと変わらない味と優しさに無条件で触れる。
そのことに心が落ち着きホッとしていたところ、向かいの祖母の顔つきが神妙なものへと変化していた。



「怜葉…、どうしてかは聞いてもええか?
急に婚約するって電話で聞かされた時、本当はおばあちゃん悲しかったわ。大した祝いも出来んと…」


「…ご、めんね」

きっと最初から、帰郷した孫の異変を察していたのだろう。頃合いを見て伺って来たおばあちゃんの目は、先ほどは違い悲しそうなものに映った。


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