戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


その表情を目の当たりにして、ただ小さく謝ることしか出来ない不甲斐無さ。しいては今日の傷口が広がり、ズキズキとした痛みを覚える。


真っ先に大切なことは伝えたいし、報告せねばならない人だからこそ。
おばあちゃんの先ほどの言葉は、容赦なく私の胸を突いたのも事実。


この痛み以上に祖母の心を傷つけていることは承知しているから、本当のことを言えるわけが無かった。



ロボット男とのなれそめがお金と権力に屈したため、すべて“偽”で構築された関係であると――




“怜葉ちゃんはな、大人びすぎとるんや。ほらほら家に居るより遊びに出なあかん。
いいかい?人は人と出会うことで成長するんやでな。
大丈夫やから安心しぃ――ここには怜葉ちゃんを傷つけるものは何もあらへんよ”



東京での毎日に尻尾を巻いて逃げた私は、実母の実家の“緒方”姓を名乗らせて貰えたことで今の生活が送れているのだ。



名古屋へやって来た私を諭すように温かい手と言葉をかけてくれた2人は、すぐにかけがえのない存在となった。


その優しさに触れられたことで、歌舞伎一色で何もなくなった私の毎日は周りの日常と溶け込む事が出来たのだから。


今も感謝しきりである大切なおばあちゃんだけは、思いと裏腹な事実や嘘の感情を告げて裏切りたくなかったの…。


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