戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


今日もあたたかい歓迎リアクションを受けたのち、そっと肩へ手を置き離してくれたおばさまと顔を見合わせた。



「ソフィアおばさま、こんばんは。
すっごくご無沙汰してます、遅くにすみません」

「なに言ってるのよ!さぁ早く入って」

「ふふ、それじゃあお邪魔します」


笑い合いながら玄関で留まっていた私たちは、彼女の“カモン”という動作で中へと進んでいく。



このお宅の内装は和メインだが、外観は歯科医院の建築様式に合わせての洋風である。


外見はロココ調家具と填まっているソフィアおばさまだけど、意外なことに畳が何より落ち着くそうだ。



「あ、トキちゃんの帰省をご報告しなきゃ!」

「うん、させて下さい」

何より驚かれることといえば、来日して学んだ日本伝統をこよなく愛する姿勢。


それまで敬虔なクリスチャンであったが仏教へと改宗し、今や下手な日本人より忠実な信者である。


彼女ともに向かった仏壇部屋で正座をすれば、やはりこの地方特性の立派な御仏前に、それぞれ静かに手を合わせた。



ちなみに名前から気づかれているだろうが、和を厚く重んじるソフィアさんは生粋のアメリカ人である。


ダーク・ブロンドのストレートヘアにダークグレイの瞳の色は、相変わらず美人なおばさまの特徴。


さらに細く長いその脚には、セブンのデニムがよく似合うから年齢も一切感じさせない。


< 107 / 400 >

この作品をシェア

pagetop