戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


すっかりオトナの色気がアップしていて…、これだと彼お目当てで通っている女性も多いのではないか。


「それにしてもトキちゃん、東京行ってからまた綺麗になったねぇ。
たまには向こうで、兄貴とも会ってる?」

「んー、修お兄ちゃんは常に忙しいでしょう?
忙しいのを知ってるしねぇ…、ヒマ人OLが気楽に誘えないよ」

「ハハッ、それもそっか」


ソフィアさんの性格譲りなのか、それともハーフであるせいだろうか。
どうしてか会う度いつも、大して可愛くもない私を挨拶代わりに褒めてくれるのだ。


もちろんその発言には今日も綺麗にスルーして、彼のお兄さんである修平さんの件について笑顔で返す。



ちなみに修平さんは私と同じく、歯科医院でなく東京で働いているけども。
彼の場合それこそ次元の違う、いわばエリート社会人であるといっても良い。



此方に住んでいた頃、年の離れた隣の家に住んでいた私に優しかった修平さんは、気さくなタイプの琉お兄ちゃんより静かで落ち着いた人となり。


おばさま譲りのダークグレイの瞳と栗色のサラサラな髪を持つ彼らは、巷で美しく聡明な兄弟と有名だと専らの評判だった。


その修お兄ちゃんが働いている先は、私では天と地がひっくり返っても入れない有名外資企業である。


研究開発をしているだとか何とか聞いたが、まったくの一般社員からのスタートで今ではなんと、日本支社の執行役員という肩書きまで得ているそうだ。


まさに自力で地位を確立した修お兄ちゃんは多忙すぎて、お互い東京に住んでいてもOL生活を送る私が気楽に連絡を取ることは今も躊躇われている。


間違いなく彼が名古屋を避けていたし、私もどこか遠慮していた部分もあったから…。


< 109 / 400 >

この作品をシェア

pagetop