戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


これは礼節を重んじるおばあちゃんが一緒に来ていれば、非常識だと怒るに違いなかった。



「そうそう。同じ会社の人らしくてさ、すごい可愛い人だったよ。俺も会ってビックリだったしね。
2人の仕事の都合で、確か式を挙げるのは5月の末だったかな…。
コッチで式するから来てやってよ?久しぶりに怜ちゃんと会えたら、兄貴も喜ぶよ絶対に」


「え、いいのかな…?でも、また修お兄ちゃんに会えると良いな」

「もちろん、兄貴に伝えとくよ」

「うっそー、怜ちゃんも来てくれる!?」

「おばさま!」

よほど修お兄ちゃんの結婚が嬉しいのか。話に割り入って来たおばさま。


あれこれ詳しく話し始めた彼女に対し、もう耳タコだと呆れていた琉お兄ちゃん。


おばさまの結婚話がトーンダウンしたところで。歯科医師をしている彼もまた、来年頃には2年ほど付き合っている彼女と結婚すると教えてくれた。


聞いてみればOLだという彼女のことを、いつも以上に優しい顔で嬉しそうに話してくれるから。


比較するのは失礼にしても、築き上げたウソの関係ほど惨めなものはないと思えたが。


これは自らが今の環境を守るために選んだ道であって、後悔していると考えた方が間違いだった。



「琉お兄ちゃんに想われて、彼女さんも幸せだよねぇ」

「どうだろ?喧嘩ばかりだし――そういう、怜ちゃんはどうなの?」


それでも、どうしても。この人だと思えた相手と出会い、まさにこれから結婚をするという、彼らの今の幸せぶりに触れれば胸も痛む。


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