戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
なによりおばあちゃん以外には、名古屋での知り合いに婚約の事実を一切告げていないこともまた辛い。
せっかく喜んで頂いても、専務との嘘の関係には終わりが待つだけで言えなかった。
「…ううん、私は多分ずっとフリーかな?
だって、琉お兄ちゃんが引くくらい干物生活だから」
「なーに言ってんの。怜ちゃんの可愛さは俺が保障する」
「ええー、可愛い人は売れ残んないから」
「怜ちゃんは準備中なだけ」
「ふふっ、なにソレ…!」
“オトコ出来たら出張査定してやるよ”なんて笑い、くしゃっと豪快に頭を撫でてくれた琉お兄ちゃん。
ただの恋愛相談だったなら、もっと楽な気持ちで過ごせたかもしれない。終始取り繕うばかりの私は、果たして上手く笑い返せただろうか?
もう弱気になるのがイヤで帰って来たというのに、どこを訪れても結局は“今”の自分への答えが見つけられなかった。
それどころか皆が楽しそうに活きている姿に触れて、何をしているのかと恥ずかしさを覚えるだけだった。
その後1時間ほどして隣から戻った私は早々と入浴を済ませ、何年振りかにおばあちゃんと隣合った布団で眠ることにした。