戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】
ロボットな坊ちゃまが連れて来た私は、この第一の関所で既に採点されていると判断した。
メイド服とまではいかないが、それに近い格好の彼女はいったい幾つなのだろうかと思えてしまう。
それすら一切構わず、私を引き連れて中へ入ろうとする男。今さらだが説明も一切なしの身勝手さに、慌てて手を小さく振り解こうとした。
「――何でしょう?」
「彗星さん…、“これでは”挨拶出来かねます」
繋いだままの手に視線をちらり落とし、遠まわしに嫌味を込めてニッコリした筈が、まさか彼が小さく鼻で笑うとは失礼すぎる。
到着早々やたらとフラストレーションが溜まるものの、ようやく手を解放して貰えた。
それどころか場所的に文句を言える訳がない。この白い大理石の床に、吹き抜けの天井でキラリと光るシャンデリアの煌々とした様は圧巻ものだ。
まったくこういった物に興味がない私でさえ、へぇと感嘆の声を漏らしかけた素晴らしさである。
ロボット男が着物姿を新鮮”と言った理由に、今さら納得させられた。
ついでに彼がヨーロピアンチックな趣味であることも、説明するには十分こと足りるわ。